2013年4月21日日曜日

リドリー・スコットが「プロメテウス」で描く逆説的新・創世記

ツタヤの「観忘れていませんか?」の棚にリドリー・スコットの「プロメテウス」が。


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おお、観忘れてたよ。
予告編を観て、これ絶対見なきゃ、と思ってたのに。

毎日新聞で映画記事を担当している友人に昨年会った時、「プロメテウス」については、観る予定のある人には何も言わないことに決めている、との謎めいたコメントをもらっていて、さぞやびっくりのラストなんだろうなあ、と非常に期待していたのだ。

しかし観終わって彼の真意がそこにはなかったことが、よくわかった。
この映画には見処が一箇所しかなく、その見処も今日的には著しくインパクトに欠け、ごく一部の人にしかアピールしない類のものだったのである。

だから映画評論を手がける彼にとっては、この映画は、たった一言で説明できてしまうし、説明すると映画を観る楽しみ自体が無くなってしまう。そして、本当にこの映画で考えるべきポイントは、それを知らないと語り合えない。
だから、彼は観る予定のある人には何も言わない、と言ったのだろう。

彼の考えを支持して僕もこの映画の見処そのものには言及しないが、この映画が「新しい創世記」を意図して作られているのではないか、とだけ言っておきたい。

中盤、生物学者が「ダーウィニズムを否定する気か?」と問うシーンがある。
確かに、創造主に異星人を設定した本作は進化論を否定している。
また、この異星の創造主「エンジニア」が2000年前に絶滅しているという設定もナザレのイエス=異星人説を示唆していて意味深長である。

宗教に対して原理的であることが、世界の秩序を破壊しつつある現代において、「新しい創世記」を「意図的に」穴だらけで雑なシナリオで描いて、しかもラストの「見処」において、所詮それだってエンターテインメントなのよ、と言い放ってしまうことによって、「今はさあ、もっとほかに考えなくちゃならないことがあるんじゃねえの」とリドリー・スコットが言っているような気がしたのは、まあたぶん僕の下衆の勘繰りなんだろうな。